発達障害と気になる子ども

現代の子育てでは、子どもの発達に対して不安を抱くママパパが少なくありません。発達障害と、一時的な発達の遅れや個性の違いで「気になる子ども」と判断される状態は、混同されやすいポイントです。この記事では、両者の違いを正確に見極めるためのポイントを分かりやすく解説します。

・発達障害と気になる子どもは違う
・なんでもかんでも「発達障害」のせいにしない
・発達障害は身近なこと

文部科学省は2012年に全国の公立小・中学校を対象に、発達障害の可能性がある児童生徒の割合を調査しました。
通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について:文部科学省

その結果、「知的発達に遅れはないが、学習面または行動面で著しい困難を示す」と判断された児童生徒の割合が6.5%と発表されました。人数にして約67万人、約16人に1人、40人クラスに1人はいるという結果です。

具体的な内訳は以下の通りです。

しかし、これは発達障害が増えているというよりは、医療の進歩により気づかれやすくなったと考えるべきでしょう。

STEP
発達障害は生まれつき脳の機能が通常と異なる働きをすること

・障害だから悪いこと
・育ってきた環境のせい
・親のしつけや育て方のせい

・病気や障害というより発達のでこぼこ(=個性)
・人より得意なことも、不得意なこともある

STEP
環境調整、行動療法、投薬により「本人の潜在能力」は引き出せる

・薬ですべて解決する
・薬を飲むと性格が変わってしまう
・行動療法で「普通」になれる

・薬は症状を抑えるものであり、根本治療はできない
・行動療法により社会技能(ソーシャルスキル)を高め、自尊心をつけることができる

目次

年齢ごとの気づき

赤ちゃん期(0~1歳半頃)

・この時期で診断をすることはありませんが気になることは注意深く観察しましょう

・視線が合わない、指差しができない、同じもので遊び続ける、バイバイをしない、などASD(自閉症スペクトラム)に特有の傾向が見られることがあります

乳幼児期(2~6歳半頃)

・親だけでなく、幼稚園保育園などで「困り感」が出てきます

・ADHD:集団生活になじめない、走り回っている、危ないことを機にせずやってしまう

・ASD:会話がちぐはぐ、友達などに興味がない、決まった遊びしかしない

・ママパパ、先生、支援機関などと早いうちからサポート体制を構築しましょう

学童期(6歳半~小学生頃)

・苦手なことが増えてくるだけでなく、周りのペースについていけなくなることが増えてきます

・ADHD:集団生活ができない、授業中に走り回る、注意散漫、忘れ物、片付けができない

・ASD:友達に興味が持てない、学校のルールが守れない

・LD(学習障害):簡単な読み書き計算ができない、何度やっても音読につまづく

・統計上は、クラスに2~3人は「学習面または行動面で著しい困難を示す」子どもがいます。努力が足りない、もっと勉強させなくてはと必死になるかもしれませんが、まずはお子さんの特性を把握して適切な支援を考えましょう。

思春期以降(10歳頃~)

・学童期に現れた困り感がさらに強くなるとともに、周りからの指摘やプレッシャーにより二次障害を発現することがあります

・学習成績が著しく高い子どももおり、困り感を感じることが少ないまま社会人になることもあります。大学生になった時に一人暮らし、アルバイト、時間割、就活に苦労をしてドロップアウトしてしまうケースもあります。学業だけでなく、社会的なスキルをつけてあげましょう。

検査と診断

発達障害は複雑であり、インフルエンザのように陽性・陰性で判断することはできません。専門家の丁寧な診察により診断されます。大事なことは、診断をつけることではなくお子さんのでこぼこを見極めて適切に対処することです。

主な検査については下記をご覧ください。Hana学院では、医療機関でのWISC実施を推奨しております。子どもの能力の得意不得意がわかるため、学習計画を立てる際にも有用と考えております。

ウェクスラー式知能検査
  • 対象年齢
    約6歳~16歳
  • 特徴
    • WAIS-Ⅳ(成人用)、WISC-Ⅴ(児童用)、WPPSI-Ⅲ(幼児用)に分かれる
    • 「全検査IQ」「主要指標」「補助指標」の3つの指標レベルの結果から、知能を測定し主要な認知領域を評価
    • 高い信頼性と妥当性を持ち、世界中で標準的な知能検査として広く用いられている
    • 統計的に整備された標準化手法により、個々の認知プロファイル(得意分野・苦手分野)が明らかになる

【参考】 Wechsler, D. (2003). WISC-IV Administration and Scoring Manual など

田中ビネー知能検査Ⅴ
  • 対象年齢
    2歳〜成人(主に発達評価の文脈では幼少期~学齢期を対象)
  • 特徴
    • 年齢ごとに問題が分類されており、どの年齢の知能レベルまで理解できているのかわかりやすい
    • 思考、言語、記憶、数量、動作、推理、構成 など、全体的な知能や認知発達の状況を把握する
    • 問題が解けなかった年齢級と生活年齢(実年齢)の比によって、どの年齢のレベルまで知的能力があるかわかる
  • 【参考】 ビネー式知能検査の改訂版マニュアルおよび解説文献
新版K式知能検査
  • 対象年齢
    おもに0~7歳未満の子ども
    (※検査の目的や版により、対象となる年齢層は多少異なる場合があります)
  • 特徴
    • 運動や認知のテストもおこなって発達状態を評価する
    • おもちゃを使用するなど言語表現の負担が比較的小さいため、言語発達が未成熟な子どもにも実施しやすい
    • 「姿勢・運動領域」「認知・適応領域」「言語・社会領域」の3つの領域でテスト
    • 短時間で実施でき、学校現場や臨床現場でのスクリーニング検査として有用
    • 発達水準を年齢で示した「発達年齢」、実際年齢との比「発達指数」を示す

【参考】 新版K式知能検査のマニュアルおよび関連解説書

津守式乳幼児精神発達診断法
  • 対象年齢
    主に0歳~就学前(一般に0〜3歳、または0〜7歳程度までの乳幼児)
  • 特徴
    • 医療や福祉の場面で使用される発達検査
    • 発達の各領域(運動、認知、言語、社会性、情緒)の発達段階を定性的・定量的に評価する方法
    • 定められた発達基準やチェックリストに基づき、おもに養育者が子どもの行動に関する質問に答える。
    • 早期の発達の偏りや遅れを検出することで、早期介入や支援の必要性を判断する手法として用いられる
    • 養育者に質問するため、結果が養育者の主観に操作されやすくなり、他の検査よりも良い結果が出やすい

【参考】 文部科学省の「乳幼児精神発達法に基づく発達評価の手引き」などのガイドラインおよび関連文献

ご参考までに、以下の外部サイトではより詳しく解説しておられます。

【完全版】精神科の心理検査一覧|発達検査・知能検査・人格検査を詳しく | こころちゃんの心理検査教室

気になるところを見つけたら専門家に相談し、早期に検査をして診断をつけましょう
特徴をはっきりさせることでお子さまにあったサポート体制を構築しましょう

Hana学院では、発達障害に詳しい先生たちが将来を見据えたサポートをしております。

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